桃太郎と赤鬼
◆桃太郎と赤鬼◆
おーい、赤鬼！
なんだ桃太郎、久しぶりだな
宝はもうないぞ
返す
何を？
宝を返す
は？いらねぇ
返す
いらねぇて言ってんだろ！
どうしたんだ赤鬼
宝を返しに来たんだ
どうしたんだ赤鬼、……は？
俺たちは体を張って
今日食べる分を稼いでいる
土の匂いだ、ほこりの匂いだ
そんなピカピカ光るものなんかいらねぇ
物語の中に生きているか？桃太郎！
おまえの物語は
俺たちを倒し、宝を手にしたところで終わった
だがなぁ、
俺たち鬼は、そこから物語が始まったんだ
青いカナリア／小野リサ（曲）
幕上がる
［ガランドウの舞台］
広いわね
キジ子、金はいくらでもある
あの珊瑚礁、一、二個売れば
ブランド物の服は何十着と買えるよ
確かに
ブティックやりたいと言ったけど…
これじゃ広すぎるわ
車もそう、
車欲しいって言ったら
赤のランボルギーニ買ってくるし
そうじゃないって言ったら
黒のランボルギーニ買ってくるし
あなた何か変
キジ子、俺は鬼に勝ったんだ
鬼ヶ島に行って
赤鬼に勝ったんだ
サル！
サルは居るか
へいへい、草履を懐で温めていました
靴を磨け
へいへい
（サル革靴を履く）
へいへい
そのへいへいはやめろ
へいへい
もういい
俺を怒らせるな
木にでも登って来い
（財布から金を渡す）
へいへい
殺すぞ
（サル風のように逃げる）
桃太郎、わかってるよね
俺の性格が悪いことか？
わかっていればいいけど
俺は鬼と真剣勝負して
勝って
宝を持ち帰り、爺さんや婆さんにも
美味い飯食べさせて
ふかふかの羽毛布団で
死ぬまで、いい思いをさせてやった
こうしておまえにも
サルにも
いい思いさせてやった、やってる
犬はどっかいっちまったがな
やっぱり犬は首輪つけとかないとダメか
はっはっは
桃太郎、返しなさいよ
鬼に宝
返しなさいよ
はあ？
キジ子
なに言ってるんだ？
［舞台消え、花道にライト］
青鬼と赤鬼が包帯を巻いている
イテーェー！
うるさいよ、青鬼
でも、親分、
なんで宝、全部あげちゃうんすか
三分の一、いや十分の一でも
残して置かないでどうするんすか
馬鹿野郎、俺たちは負けたんだ
命があるだけでも
ありがたいと思え、
それにしても桃太郎、強いっす
人間じゃねぇ
でもあいつウソついたっす
桃から生まれたって
桃尻から生まれたくせに…
（バチン！）
ひぇ〜
親分痛いす！
あれ？なんだおまえ
犬じゃねぇか
なんでこんなところにいるんだ
俺、巨人より
広島の方が好きなんで
意味わかんねー
ねぇ親分、（ポンと叩く）
イテーェよ！
［舞台に戻る］
だから、鬼に宝返しなさいよ
おまえ
会社で働いて
給料貰って、返すバカがどこにいる
俺は仕事をした
しかも命をかけてな
子供のゲームじゃないんだ
命をかけて戦った
その報酬だ
きびだんごが泣いているわ
団子三兄弟か
笑わせるな、はっ
あなたは弱い
いえ、あなたは強かった
あなたは強かったから
きびだんご一つに
私の命を委ねました
わかる？
さよなら
［キジ子去る］
なんだよ…
［舞台徐々に暗くなる］
［舞台中央、広めのスポット］
［桃太郎と赤鬼がいる］
おーい、赤鬼！
なんだ桃太郎、久しぶりだな
宝はもうないぞ
返す
何を？
宝を返す
は？いらねぇ
返す
いらねぇって言ってんだろ！
どうしたんだ赤鬼
宝を返しに来たんだ
どうしたんだ赤鬼、……は？
俺たちは体を張って稼いでいる
土の匂いだ、ほこりの匂いだ
そんなピカピカ光るものなんかいらねぇ
物語の中に生きているか？桃太郎！
おまえの物語は
俺たちを倒し、宝を手にしたところで終わった
だがなぁ、
俺たち鬼は、そこから物語が始まったんだ
おー！！！桃太郎よ
この心臓が動いているうちは
物語はつづくんだぜ……
青いカナリア／小野リサ（曲）
［幕］
