カケラ

娘は死を選んだ
生きていることを肯定することは
娘を否定することにつながる
生きている俺はどうすればいいのだろう

こんな雨じゃなく
台風のこんな雨じゃなく
しとしとと、優しい雨の日だった

誰も知らない何も残さない
娘の死んだ理由
それがあいつの凄いところ

信じられないという思いは
残された皆、死ぬまで消えないだろう
だから、信じられる僅かなカケラにしがみつく
ほんのちょっとのカケラがあれば
それにしがみつく

あいつか骨になったとき
残った細かい粉や灰をどうしますか
と聞かれ
要らないですと答えたら
いっせいにまわりから全部入れてくださいと
怒るように言われた

あいつは骨なんかじゃない
しとしとと降る優しい雨
それが、あいつのカケラ

「千の喜びは一つの苦しみにも値しない」
ミケランジェロ

人気の投稿